筆者は学生時代にインスリン値と胃酸の分泌状態を測定する博士論文のお手伝いをしたことがある。血中インスリン値が高いと胃酸の分泌程度が高くなる。したがって糖質制限をしないで、糖分過剰で血糖が高いときは、高インスリン血症をもたらし胃酸の分泌が盛んになり、胸やけがひどくなる。このような患者に胃酸分泌抑制剤(H2ブロッカー・PPI)が簡単に処方されている。また内視鏡所見や胸やけの症状で、逆流性食道炎の診断を受け、すぐに簡単に制酸剤が処方される。またOTC剤として処方箋なして、コンビニやスーパー、ネットで制酸剤を購入出来る。胃から酸が低くなると、一応症状は軽くなる。しかし、胃から酸が減少すると、胃の中にあるたん白質分解酵素の前駆体・ペプシノーゲンがペプシンに変換されず、食べたたん白質がアミノ酸に分解されないので、たん白質の腸からの吸収が悪くなる。従って体内のたん白質の量が減ると、たん白質から出来ている胃の粘液の産生が悪くなり、胃の中の状況はさらに悪くなる、いわゆる悪循環である。
通常制酸剤を常用している人の手は、たん白質の腸からの吸収状態が悪いので、手を触っても皮膚が荒れてすべすべしていない。患者の手を触らない医者には分からない。胸やけの訴えで制酸剤(H2ブロッカー・PPI)を服用している患者には、糖尿病や肥満症でなくても、糖質制限食を勧め、高インスリン血症を改善してみる価値はある。
制酸剤を常用してなくても、胃酸分泌の悪い人がいる。例えばピロリ菌陽性の人は、委縮性胃炎のために胃粘膜が荒れて胃酸の分泌が悪い。酸が少ないと3価の鉄が2価に変換されないので、鉄の吸収も阻害される。酸の分泌が悪いとたん白質のアミノ酸への分解消化が悪く、肉を食べても「胃がもたれる」。
胃に訴えのある患者、不定愁訴や倦怠感のある患者、不妊症の方などは、ピロリ検査が必要である。血液検査でピロリ菌抗体の有無を調べ、ペプシノーゲンIとIIの比を調べて胃酸分泌状態を検査すべきである。私は呼吸法で陰性であったが、血液法で陽性で胃がんの初期を発見したので、血液検査に重きを置いている。
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