我が国では1981年(昭和56年)以降、死因の第1位は(癌)がんになり、最近では3人に1人の割合でがんが原因で亡くなっています。
患者は大きな病院での最新のがん治療法を行い、それが限界にきた場合、「手の施しようがありません!」と最終通告を受け、ホスピスや自宅療養で余生を過すように言われます。これが残念ながら現在「がん難民」と言われる人々です。
「がん難民」の患者やその家族は、藁をも掴む思いで、民間の色々の抗がん治療に希望をつないでいます。
そこで最近日本に登場したのが「高濃度ビタミンC療法」です。
高濃度ビタミンC療法は、米国の化学者で平和論者であるライナス・C・ポーリングにより提唱されました。
ライナス・C・ポーリングは、物理の分野と化学分野を融合させ、分子生物学を確立させた功績で1954年にノーベル化学賞を、さらに世界を核汚染から救う核実験の中止を訴え実施させた功績で、1962年にノーベル平和賞を2度授賞されて20世紀最大の化学者です。
彼は、人間の細胞と化学作用を詳しく研究して、栄養バランスのよい食事、ビタミン剤やミネラル類を“至適量”摂取すると健康になると唱えた学問・「分子整合栄養医学」を確立しました。「整合」とは「正しく整えること」を意味します。
そして発表当時、彼は「ビタミンCは人類を救う」と明言し、世界中で有名になりました。しかし、当時一介の化学者が、医学の治療法に口を挟むことを反対され、「医学界」のみならず、「化学界」からも30年間近くも異端者や狂人扱いされてきました。
その当時、ポーリングの理論を信じた医者がいました。リオルダン先生です。(癌)がんに対する「高濃度ビタミンC療法」を行うために努力しました。
彼の信念に理解者が現われ、米国カンサス州ウィチタで、「高濃度ビタミンC療法」を実践することが出来、よい結果を出すことが出来ました。そしてアメリカ国立衛生研究所・国立がんセンター・食品医薬品局の科学者たちが「高濃度ビタミンC療法」の結果を追試験して、平成17年(2005)に高濃度ビタミンC療法の基礎研究論文を発表しました。
現在アメリカで約1万人の医師が、日本では約100人の医師たちが「高濃度ビタミンC療法」を開始しています。
しかし大切なのは、高濃度ビタミンC療法だけでは、延命やガンの消退効果は達成できないことです。がん治療患者の栄養状態の改善を図ることが、一番大切なのです。
血中アルブミン値を出来れば、3.5mg/dl以上に保ち、ヘモグロビン値も10g以上、出来れば12g以上あると、高濃度ビタミンC療法を併用すると結果が期待されます。
アルブミンの濃度を上げるには、アルブミン点滴静注や経口でプロテインやアミノ酸(健康保険薬ではESポリタミン)や、BCAA(ロイシン、イソロイシン、バリン等の分枝鎖アミノ酸)をサプリとして投与することが出来ます。
この栄養療法を併用して“ヘム鉄”を投与すると、ヘモグロビンの上昇が期待できます。
通常がん治療患者は、とくに抗がん剤化学療法や放射線療法は免疫機能を下げ、体の栄養状態を悪化させますので、がんで死ぬより栄養障害で死亡すると言われています。
このように、がん治療患者がガンと闘い、よいQOL(生活の質)を保つためには通常の元気な人間以上に栄養状態に注意を払う必要があります。
進行の進んだがん治療患者は、通常たん白質不足のために高度の貧血があります。
栄養を与えるとガン細胞が栄養を奪って、ガンの成長が速くなるとの誤った考えから「食を控える」、とくにたん白質を抑える間違った栄養指導がされています。
過去4年間、私は東京でポーリングの分子生物学の知識に基づき、ポーリングが唱えた「分子整合栄養医学」を金子雅俊先生に習ってきました。
そしてその知識を日常の患者のケアに実践し、とてもお役に立っています。勿論高濃度ビタミンC療法のがん治療患者の栄養にも注意して、活用させて戴いています。
金子先生は、米国でポーリングが存命中にポーリングの薫陶をうけ、20数年前に日本に帰国以来「分子整合栄養医学」を日本で広めておられます。
金子先生とカンサスのリオルダン医師は、ポーリングの同じ門下生のために、金子先生は日本で早くから「高濃度ビタミンC療法」を実施され、私たちにその効用を教授されて来ました。
爾来、私もガン患者の栄養問題と「高濃度ビタミンC療法」に大変興味を抱いていました。そして平成20年の1月からその知識を活用しています。これは非常に嬉しいことです。
高濃度ビタミンCが細胞に入ると過酸化水素(H202・別名オキシフル)が発生します。
正常の赤血球膜には「G6PD」という酵素があり、高濃度のビタミンCを処理出来ます。従って高濃度ビタミンC点滴療法を実施する前に必ず赤血球膜G6PD活性を測定します。
G6PD活性が低下している患者に、高濃度のビタミンCを血管内に投与すると、重症の急性溶血性貧血発作を起こす危険が存在します。これが重大な副作用であり、その他は安全な治療法であると報告されています。
しかし米国カンサスでの報告では1000人に5人程度の割合で、「G6PD」酵素(グルコース6リン酸脱水素酸素)が低いか欠乏している人がいることが判明しています。
不十分な「G6PD」酵素のために、大量の赤血球が破壊され、肝臓や腎臓の働きが落ち、重篤な副作用があることが発表されています。安全のために高濃度ビタミンC療法を始める前に「G6PD」酵素が十分にあることを検査証明する必要があります。
また、栄養の悪い患者に高濃度ビタミンC療法を継続すると、腹水が貯まることがあります。
これは軽い利尿剤の投与を行うか、アルブミン製剤を点滴静脈注射したり、経口でたん白質を補う必要があります。また利尿剤とアルブミン投与を一緒に使うことで解決が可能です。
ビタミンC50グラムから75グラムの高濃度ビタミンC療法を週2回か3度行う必要があります。
また、療法を行わない日は、1日経口ビタミンCを10グラム(2000ミリグラムX5回分)療法を奨めています。
ビタミンCの点滴療法を終えた時点で、血中ビタミンC濃度が400mg/dl(4000ng/ml)以上になるように目指します。点滴を終了した時点で、ビタミンC血中濃度を計測する必要があります。当院ではビタミンCを最高1日100グラムまで投与しています。
ビタミンCの血中濃度次第では、150グラムを投与している医療機関もあります。この高濃度ビタミンC療法は、まだ健康保険では認めていません。そのために自費診療になります。通常1回のビタミンC療法では、2万から3万円必要で、月に10~15万円程度必要です。民間療法やあるガン病院に入院して、ガン治療法で月に100万円も払っている方の話も聞いています。それに比べると高濃度ビタミンC療法は、安全で安価であると思っています。
当院では、がん治療患者の安全のために、高濃度ビタミンC療法を開始する前に必ず「G6PD」酵素が十分に存在することを証明しています。また、高濃度ビタミンC療法では、適宜ビタミンCの血中濃度も測定します。
よりよき患者のQOLのために、東京での「高濃度ビタミンC療法」と「分子整合栄養医学」の勉強会に出席し最新情報を収集しています。また関係専門誌とインターネットからの情報収集に努力しています。
色々の文献やインターネットでビタミンCの情報を集めると、興味ある記述に遭遇します。ほとんど全ての疾患は、ビタミンC欠乏症であるという記事にも遭遇しました。
人間とモルモットはビタミンCを生成出来ませんが、産生可能な動物をストレス状態に置いてみて、その動物のビタミンCの血中濃度を測定すると、人間が1日に10gから100gの摂取量に相当する量だそうです。
すなわちストレスに対処するために、高濃度のビタミンCを産生しています。従って我々がいう高濃度ビタミンC療法は、ビタミンCを産生できる動物にとっては、高濃度ではなく、生理学的濃度だそうです。残念ながら、1日のビタミンCの必要量(RDA)は、壊血病を予防するための必要量である1日50mgと決められていて、極端に少ないように思えます。ビタミンC療法は、今後益々色々な展開が生まれて来そうな感じのする、興味ある療法と思っています。
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赤字の日が休診日となっております。